SNS担当者を決めれば、会社の発信はうまくいくのか?
―SNSから考える「属人化」と「仕組み化」―

SNSを始めたものの、続かない
先日、滋賀県信用保証協会の専門家派遣の案内を見る機会がありました。
「売上が伸びない」「事業承継について知りたい」「従業員の育成に悩んでいる」など、さまざまな経営課題が紹介されている中に、「SNSを活用したい!」という項目があります。
「課題解決(ピンポイントアドバイス)」として、SNS・ITコンサルタントの専門家派遣も用意されています。
それだけSNSの活用が、中小企業にとって身近な経営課題になっているのでしょう。
InstagramやYouTubeなどを使った情報発信は、今では珍しいものではありません。スマートフォン一台あれば、今日からでも始められます。
ところが、実際の会社ではこんな話もよく聞きます。
「始めてみたけれど、続かない。」
SNSの使い方や投稿の仕方にも原因はあるでしょう。
しかし、この「続かない」という問題を少し掘り下げてみると、SNSとは別の、会社の仕事の進め方そのものが見えてくることがあります。
「若い社員に任せよう」で始めていないか

中小企業がSNSを始めるときによくあるのが、
「若い社員の方が詳しいから、やってもらおう」
という始め方です。
SNSに慣れている社員を担当者にして、「週に何回か投稿してみよう」とスタートする。
最初のうちは順調です。
新商品を紹介したり、社員の様子を撮影したり、会社の行事を紹介したり。いろいろなアイデアも出てきます。
ところが、しばらくすると本業が忙しくなります。
「今日は投稿する時間がない」
「今週は載せるネタがない」
「写真を撮っておくのを忘れていた」
少しずつ更新回数が減り、気がつけば最後の投稿から何か月も経っている。
そんなとき、
「担当者がもう少し頑張ってくれたら」
「別の人に担当を替えた方がいいのでは」
と考えてしまうことがあります。
しかし、本当に担当者だけの問題なのでしょうか。
続かない原因は、担当者だけにあるのだろうか

SNSを会社として続けようとすると、実はいろいろな仕事が必要になります。
- 投稿するネタは誰が集めるのか
- 写真は誰が撮るのか
- 文章は誰が考えるのか
- 投稿前に誰が確認するのか
- 問い合わせが来たら誰が対応するのか
- そもそも何のためにSNSをやるのか
こうしたことを決めないまま、「SNSは○○さんに任せた」としてしまえば、その仕事は一人の熱意と能力に頼ることになります。
担当者が頑張っている間は動く。
しかし、忙しくなれば止まる。異動すれば止まる。退職すれば、それまで蓄積してきたノウハウまで一緒になくなってしまう。
問題はSNSではなく、
「仕事が会社ではなく、人についてしまっていること」
なのかもしれません。
ここまで考えると、SNSとはまったく関係のない社内の仕事にも、同じようなことが起きていることに気づきます。
SNSから見えてくる、会社の「属人化」
例えば経理なら、
「請求書のことは○○さんに聞かないと分からない」
営業なら、
「あのお客様のことは△△さんしか分からない」
製造現場なら、
「この機械の調整は□□さんにしかできない」
といった状態です。
もちろん、長く働いている社員だからこそ持っている経験や技術は、会社にとって大切な財産です。
何でもマニュアル化して、誰でも同じようにできればいいという話でもありません。
しかし、
「その人がいなければ、仕事そのものが止まる」
という状態は、一度考えてみる必要があります。
特に中小企業では、一人が複数の仕事を担当します。そのため、どうしても仕事が個人に集中しやすくなります。
しかも普段は、それでも仕事が回ってしまいます。
問題が表面化するのは、その人が休んだとき、退職したとき、あるいは会社が成長して仕事量が増えたときです。
SNSを始めたけれど続かなかった。
一見すると小さな問題です。
しかし、
「なぜ続かなかったのだろう」
と一段深く考えてみると、自社の中にある「属人化」が見えてくることがあります。
人が変わっても続く仕事に変えていく

では、マニュアルを作れば解決するのでしょうか。
それだけではないと思います。
例えばSNSなら、「毎週水曜日に投稿する」と決めても、投稿する情報が担当者に集まってこなければ続きません。
営業担当者がお客様先で面白い事例を見つけたら共有する。
現場で新しい仕事があれば写真を残す。
社内行事があれば事前に担当者へ知らせる。
SNS担当者一人が毎週ネタを探し回るのではなく、会社の中から情報が自然に集まってくる流れをつくる。
そのうえで、誰が文章にし、誰が確認し、いつ発信するのかを決める。
そうして初めて、
「担当者が頑張って続ける仕事」から「会社として続けられる仕事」
へ変わっていくのではないでしょうか。
これはSNSだけの話ではありません。
- 仕事の目的は何なのか
- 誰が担当するのか
- 必要な情報はどこから集めるのか
- どんな基準で判断するのか
- 知識やノウハウをどこに残すのか
- その人がいなくなったとき、次の人に引き継げるのか
こうした視点で社内を見渡してみると、「あの人がいないとできない仕事」は意外と多いかもしれません。
SNSが続かない。
そんな小さな問題が起きたとき、担当者を替える前に、
「なぜ、この仕事は一人の頑張りに頼らなければ回らないのだろう」
と考えてみる。
そこから一つずつ、個人に蓄積されている仕事を、会社に蓄積される仕事へ変えていく。
SNSへの取り組みは、自社の中にある「属人化」に気づき、会社の仕事の進め方を見直す、意外なきっかけになるのかもしれません。

