「金利のある時代」の経営計画

― 経営環境が変わる今、未来から逆算して会社をつくる ―

1.長期金利3%が示している「経営の前提」の変化

日本の長期金利が3%台に入ったというニュースが報じられました。

3%という数字だけを見ると、「自社の借入金利がすぐに3%になるわけではないし、うちにはそれほど関係ない」と感じる経営者もおられるかもしれません。

もちろん、国債の金利と企業の借入金利は同じものではありません。

今回のニュースから考えていただきたいのは、金利が何%になるかということ以上に、私たちがこれまで当たり前だと思っていた経営環境が変わってきているということです。

日本では長い間、低金利、低物価、低賃金という環境が続いてきました。

物価がそれほど上がらない。
人件費も大きく上がらない。
そして、お金も低い金利で借りることができる。

経営環境そのものが大きく変わらなければ、前年の実績を基準にして、
「今年はもう少し売上を増やそう」「来年は人を一人増やそう」と考えることでも、経営は成り立ちやすかったと思います。

しかし、その前提が変わり始めています

2.前年と同じ経営でも、前年と同じ利益が残るとは限らない

これから経営者が向き合うのは、金利上昇だけではありません。
物価が上がり、原材料や仕入価格が上がる。
最低賃金をはじめ、人件費も上昇していく。
金利が上がれば、借入金の多い会社では、借換えや新規借入の際の支払利息も、これまで以上に意識する必要があります。

さらに長期的には人口が減少し、働く人も減っていきます。
人材を確保するための給与や採用コストについても、今と同じ水準が続くとは考えにくいでしょう。

ここで考えていただきたいことがあります。

今と同じ経営を5年間続けたとき、5年後にも今と同じ利益を残せているでしょうか。

売上が同じでも、人件費が増える。
仕入価格が上がる。
支払利息も増える。

売上が少し伸びたとしても、それ以上に経費が増えてしまえば、会社に残る利益は少なくなります。

これまでと同じことを続けること自体が、経営上のリスクになる時代に入ってきているのかもしれません。

3.「前年+〇%」から考える経営計画の限界

経営計画をつくるとき、前年の数字を基準に考えることはよくあります。

前年の売上が3億円だったから、今年は3億1,000万円を目指す。

人件費はこれくらい増える。
経費はこれくらいかかる。
そして最後に利益を計算する。

1年間の予算を考えるのであれば、こうした考え方は必要です。
しかし、5年後の会社を考えるときまで、前年の延長線上でよいのでしょうか。

仮に人件費が毎年上昇し、仕入価格も上がり、金利負担も増えていくとします。

その環境の中で、

  • 現在と同じ商品を
  • 同じお客様に
  • 同じ売り方で提供し続ける
  • 売上を増やすためには、その分だけ人を増やす

それで本当に、5年後に必要な利益を残せるのでしょうか。

経営計画をつくるのであれば、「来年の売上をいくらにするか」を考える前に、もう少し先の会社の姿から考えてみる必要があります

4.未来を「予測する」のではなく、未来の会社を「設計する」

「でも、5年後のことなんて分からない」

そう思われるかもしれません。

確かに、5年後の金利が何%になっているのか、物価がどこまで上がっているのか、人件費がどの水準になっているのかを正確に当てることはできません。

私は、経営計画とは未来を当てるためにつくるものではないと考えています。

経営計画とは、自分たちがどのような会社をつくりたいのかを考えるためのものです。

5年後、

  • どれくらいの売上が必要なのか
  • それ以上に、どれくらいの利益を残せる会社にしたいのか
  • 何人くらいの社員でその事業を運営するのか
  • 社員にはどれくらいの給与を払える会社にしたいのか
  • 借入金はいくらくらいまでにしておきたいのか
  • どんな商品を、どんなお客様に提供している会社になっていたいのか

こうした5年後の姿を先に考えてみます。

そして、その会社を実現するためには、

3年後にどうなっている必要があるのか。

来年は何を変える必要があるのか。

今年から何を始めなければならないのか。

と、現在まで戻ってきます。

現在から未来を積み上げるのではなく、未来から現在を逆算する

経営環境が変化する時代だからこそ、この考え方が大切になってきます。

5.「金利のある時代」に、5年後から自社を見てみる

長期金利3%というニュースは、一つの象徴なのだと思います。

長く続いてきた低金利、低物価、低賃金という環境から、日本の経営を取り巻く前提が変わろうとしています。

もちろん、これから金利がどう動くのかは分かりません。
物価や人件費についても同じです。

だからこそ、経営者がすべきことは未来を正確に当てることではありません。
経営環境が変わっても利益を残し、社員に給与を払い、会社を続けていくために、

自分たちは5年後にどのような会社になっていたいのか。

そこを自分たちで決めることではないでしょうか。

そして5年後から現在を振り返ってみると、今まで見えていなかった課題が見えてくることがあります。

  • 「この利益を残すには、今の商品構成のままでいいのか」
  • 「この人数でこの売上をつくる経営を続けられるのか」
  • 「この借入金額で、金利が上がっても大丈夫なのか」
  • 「人件費が上がっても、社員にしっかり還元できる会社になっているのか」

経営計画は、未来が分かるからつくるものではありません。

未来が分からないからこそ、自分たちが目指す未来を決め、そこから今の経営を考える

「金利のある時代」に入った今、自社の5年後から現在を見直してみることが、これまで以上に意味を持つのではないでしょうか。

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