食料品の消費税が8%から1%へ―いま経営者が考えたい「価格」の話

1.食料品の消費税が8%から1%へ

政府は、現在8%となっている飲食料品の消費税率について、2027年4月1日から2年間、1%へ引き下げる基本方針を示しました。

あわせて、所得に応じた給付を行うことで、全体として飲食料品にかかる消費税負担の「実質ゼロ化」を目指すとしています。

家計にとっては、大きな負担軽減策です。

例えば、本体価格1,000円の商品であれば、現在は消費税8%を加えて1,080円です。

税率が1%になれば、単純計算では1,010円になります。

では、実際に商品の販売価格も、その分だけ下がっていくのでしょうか。

ここからは、税制の話を少し離れて、経営者として「価格」について考えてみたいと思います。

2.消費税が7%下がれば、価格もその分下げるのか?

仮に、皆さんの会社が食品を販売しているとします。

これまで本体価格1,000円、税込1,080円で販売していた商品がある。

消費税率が1%になったとき、

「税率が下がったのだから、税込1,010円にしよう」

と考えるでしょうか。

もちろん、それも一つの考え方です。

実際、消費税は最終的には消費者が負担することが予定されている税であり、政府も税率の引下げ分については、基本的には価格に反映されるものとの考えを示しています。

ただ、経営者の立場から見ると、話はそれだけではありません。

例えば、これまで税込1,080円だった商品を、税率変更後も税込1,080円で販売するなら、本体価格は約1,069円になります。

ここで考えていただきたいのです。

その商品は、本当に本体価格1,000円の商品なのでしょうか。

それとも、

お客様が1,080円を支払ってでも買いたいと思ってくださる商品なのでしょうか。

税率が変わるという出来事は、普段なかなか見直さない「自社の価格」を考え直す一つのきっかけになると思います。

3.この数年間で「本体価格」を取り巻く環境は変わった

そもそも、現在の1,000円という本体価格を決めたのはいつでしょうか。

3年前でしょうか。
5年前でしょうか。

その頃と今とでは、会社を取り巻く環境はかなり変わっています。

原材料や仕入価格は上がりました。

物流費、電気代をはじめとしたエネルギー価格も上昇しています。

そして何より、多くの中小企業にとって大きいのが人件費です。

最低賃金の引上げだけでなく、採用するための初任給や既存社員の給与についても、以前と同じ水準では人を確保することが難しくなってきました。

つまり、

「消費税が7ポイント下がる」という変化だけを見て価格を考えてよいのか

ということです。

税率は下がった。

しかし、その間に商品をつくり、お客様に届けるためのコストは上がっている。

そう考えると、税率変更前の本体価格をそのまま基準にして、

「税金が下がった分だけ販売価格も下げよう」

と考えることが、本当に自社にとって適切なのか。

一度立ち止まって考える必要があります。

4.価格は「原価+利益」だけで決めるものではない

価格を考えるとき、

「原価が800円だから、200円の利益を乗せて1,000円にしよう」

という考え方があります。

もちろん、原価や必要な利益から価格を考えることは大切です。

しかし、価格にはもう一つの見方があります。

それは、お客様がその商品にいくらの価値を感じているのかという視点です。

同じような原材料を使った商品でも、500円の商品もあれば、1,000円の商品もあります。

さらに高い価格でも選ばれている商品があります。

そこには品質だけでなく、

  • 便利さ
  • 安心感
  • 接客
  • ブランド
  • 立地
  • 専門性

など、さまざまな「選ばれる理由」があります。

では、自社の商品・サービスはどうでしょうか。

なぜ、お客様は自社から買ってくださっているのでしょう。

競合他社ではなく、自社を選んでもらえている理由は何でしょうか。

そして、その価値に対して、現在の価格は本当に適切でしょうか。

原価から価格を見るだけではなく、

お客様から見た価値、自社の強み、競合との違いから価格を見る

これからの価格設定では、この視点がますます大切になってくるのではないでしょうか。

5.環境が変わる時こそ、自社の価格を考え直す

今回の食料品の消費税率引下げについては、これから実際の制度設計や事業者側の対応も具体化していくことになります。

ただ、経営者として考えたいのは、

「消費税が下がるから、販売価格をいくら下げるか」

ということだけではありません。

むしろ、これを機会に一度、価格そのものを白紙に戻して考えてみてもよいと思います。

自社の商品・サービスはいくらの価値を提供しているのか。

お客様は何に対してお金を払ってくださっているのか。

これから人件費や仕入価格が上がっても、適正な利益を残せる価格になっているのか

価格は、税率だけで決まるものではありません。

経営環境が大きく変われば、これまで当たり前だと思っていた価格についても、考え直す必要が出てきます。

消費税率が8%から1%になるという大きな変化。

「税率が下がった。では価格をどうしよう」と受け身で対応するのではなく、これを一つのきっかけとして、

そもそも自社の商品はいくらで売るべきなのか

を経営者自身が考えてみる。

今回の制度変更を、そんな機会にしてみてはいかがでしょうか。