売上目標は一番最後?「絶対必要利益」から考える新しい経営計画のセオリー

利益と現金は必ずしも一致せず、会社にお金を残すためには、利益だけではなく資金の流れまで考えなければならないことがお分かりいただけたと思います。

利益が出ているのにお金が残らない7つの理由

決算書を見るとしっかり「利益」は出ているはずなのに、なぜか銀行口座の残高は増えていない……。経営者であれば、一度はこのような冷や汗をかくような疑問を抱いたことが…

では、「お金が残る会社」は、どのように利益目標を決めているのでしょうか。

実は、多くの会社が最初に決めている「売上目標」ではなく、会社を守るために絶対に必要な利益を先に決め、そこから売上を逆算していくのが本来あるべき経営計画です。

この記事では、その考え方である「絶対必要利益からの逆算思考」について、具体例を交えながら解説します。また、「絶対必要利益をいくらに設定すればよいのか」という考え方についても後半で紹介します。

なぜ「売上からの目標設定」は危険なのか?

一般的な経営計画では、

「今期の売上が4,000万円だったから、来期は4,200万円を目標にしよう」

というように、売上を起点に計画を立てがちです。

しかし、この方法には大きな落とし穴があります。

固定費は年々増えていく

例えば、

  • 新たな人材を採用する
  • 昇給を実施する
  • 電気代や家賃などのコストが上昇する

こうした要因によって、固定費は年々増加していきます。

仮に会社を維持するために1,000万円の利益が必要だったとしても、売上だけを基準に計画を立てると、

  • 売上は増えた
  • 固定費も増えた
  • 最終的な利益は280万円しか残らなかった

という状況にもなりかねません。

これでは会社を守るために必要な資金を確保できず、経営体力は徐々に失われていきます。

だからこそ、

売上から利益を考えるのではなく、必要な利益から売上を逆算する

という発想への転換が必要なのです。

利益とは「残り物」ではなく「事業存続費」

逆算思考を理解するためには、まず利益に対する考え方を変える必要があります。

利益とは、

売上から経費を引いて偶然残ったお金ではありません。

利益とは、

会社の未来を守るために、あらかじめ確保しておく「事業存続費」です。

利益が必要なのは、例えば次のような場面です。

  • 人件費の上昇に対応するため
  • 災害や突発的なトラブルに備えるため
  • 商品やサービスの陳腐化に対応するため
  • インフレによるコスト上昇を吸収するため
  • 将来への設備投資や新規事業に取り組むため

利益がゼロに近い会社は、崖っぷちを歩いているようなものです。

一方、十分な利益があれば、それが経営のクッションとなり、

  • 新しいことへ挑戦する
  • 人材へ投資する
  • 将来のリスクに備える

といった経営判断ができるようになります。

だからこそ、経営計画のスタートは、

「売上をいくらにするか」ではなく、「会社が生き残るためには最低いくら利益が必要か」

を考えることなのです。

「絶対必要利益」から「必要売上高」を逆算する4つのステップ

では、実際にどのように絶対必要利益から必要売上高を考えればよいのでしょうか。

具体例で見ていきます。

ステップ1 絶対必要利益を決める

まず、会社を守るために必要な利益を決めます。

ここでは、

絶対必要利益:1,000万円

と設定します。

ステップ2 来期の固定費を見積もる

次に、来期に必要となる固定費を計算します。

例えば、

  • 人件費
  • 昇給
  • システム導入費
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • その他固定費

これらを合計して、

固定費:3,500万円

と見積もります。

ステップ3 必要な粗利益を計算する

絶対必要利益と固定費を合計します。

1,000万円(必要利益)
+
3,500万円(固定費)
=
4,500万円

つまり、

会社が最低でも稼がなければならない粗利益は4,500万円

ということになります。

ステップ4 必要売上高を逆算する

最後に、自社の粗利益率で割り戻します。

例えば粗利益率が90%なら、

4,500万円
÷
90%
=
5,000万円

つまり、

絶対必要利益1,000万円を確保するためには、5,000万円の売上が必要

という答えになります。

売上目標は最初に決めるものではなく、最後に導き出される数字なのです。

「絶対必要利益」はどう決めればいいのか?

ここまで読んで、

「会社を守るための利益が大切なのは分かった。でも、その金額はいくらに設定すればいいの?」

と思われた方も多いでしょう。

絶対必要利益は、次のような視点を組み合わせて考えます。

1. 借入金返済から考える

年間の借入返済額を踏まえ、返済後も十分な資金を会社に残せる利益を考えます。

2. 社員一人当たり利益から考える

将来の昇給や内部留保を考え、

社員一人当たり100万~200万円程度

を目安に設定します。

3. 経常利益率から考える

目安として、

粗利益率の20%程度

を経常利益率として設定する方法です。

例えば、

  • 粗利益率50%なら
  • 経常利益率10%を目標にする

という考え方です。

4. 累積赤字から考える

過去に赤字がある場合は、

「何年で解消するか」

という視点から利益を上乗せします。

5. 前期実績を基準に考える

もっともシンプルなのは、

前期利益を基準に目標利益を設定する方法です。

これらの考え方を組み合わせながら、

経営者として「この利益は必ず確保する」という覚悟を持って決めること

が重要です。

ギャップこそが経営計画の出発点

例えば、

現在の売上が4,000万円だった会社が逆算してみると、

必要売上は5,000万円

という結果になるかもしれません。

その数字を見て、

「そんな売上は到底無理だ」

と思うかもしれません。

しかし、そのギャップが見えたこと自体に大きな意味があります。

現状のままでは会社を守れないという事実が分かるからこそ、

  • どの商品を伸ばすのか
  • どの顧客を増やすのか
  • どの事業をやめるのか
  • どのような営業戦略を取るのか

といった具体的な経営戦略を真剣に考えられるようになります。

ギャップは失敗ではありません。

会社が本当に取り組むべき課題を明確にするための出発点なのです。

まとめ

前回の記事では、「利益が出ていても現金は残らない理由」を解説しました。

そして今回は、その課題を根本から解決するための考え方として、「絶対必要利益から逆算する経営計画」をご紹介しました。

売上目標を最初に決めるのではなく、

会社を守るために必要な利益を先に決め、その利益から売上目標を導き出す。

この発想に切り替えることで、経営計画は希望的観測ではなく、会社を持続的に成長させるための現実的な計画へと変わります。

まずは、自社にとっての「絶対必要利益」がいくらなのかを計算してみてください。

そこから、会社の未来を変える本当の経営改革が始まります。