微差・僅差の積み重ねが、大きな差をつくる― 朴の森で「掃除に学ぶ」 ―

先日、山口県の「朴の森・鍵山記念館」へ、一泊二日の研修に行かせていただきました。テーマは「掃除を学ぶ」ではなく、「掃除に学ぶ」です。私にとっては約4年ぶり、二度目の訪問でした。
掃除の手順を教わるだけではありません。実際に手を動かし、現地の方々のお話を聞く中で、仕事や経営についても考えさせられました。特に心に残ったのが、「微差・僅差」という言葉です。

掃除用具庫に表れていた「物を大切にする」姿勢
朴の森は、イエローハット創業者・鍵山秀三郎さんの思いや掃除の実践に触れられる場所です。館内でまず驚いたのは、掃除用具庫の美しさでした。
ほうきやちり取りなどの置き場所と置き方が決まり、使った人が戻せば次の人がすぐに使えるようになっています。掃除道具の中には、10年以上使われているものもあると伺いました。それでも、長年使ったとは思えないほど丁寧に手入れされています。

「物を大切にする」と言葉にするのは簡単です。けれども、ここではその考えが、使った後の手入れや道具の収め方に表れていました。考え方が毎日の行動になっている。そのことが、写真に写る用具庫からも伝わってきます。
整理された用具庫は見た目が美しいだけではありません。道具がどこにあるかを誰でも分かり、使い終わった後に迷わず戻せます。その状態を保つには、使う一人ひとりが同じように大切に扱う必要があります。そこに、掃除を通じた人づくりを感じました。
紐一本にも、小さな工夫がある
特に印象に残ったのは、道具を吊るす紐です。紐の種類だけでなく、長さまで決められていると伺いました。

紐の長さを揃えたところで、一日で大きな成果が出るわけではありません。ですが、取り出しやすさ、戻しやすさ、傷みに気づきやすい状態を少しずつ整えていけば、道具を長く大切に使うことにつながっていくのでしょう。
「なぜ、ここまでやるのだろう」。最初はそう感じるほどの細かさでした。しかし、現場を見るうちに、その一つひとつに長年の工夫が重なっていることを感じました。
整った用具庫だけをまねしても、同じものができるとは限りません。「次に使う人は困らないか」「道具を傷めず使えているか」と考え続けることが、その状態を支えているのだと思います。
「微差・僅差」は、続けることで大きな差になる
研修では、鍵山秀三郎さんのご子息である鍵山幸一郎さんからもお話を伺いました。その中で最も心に響いた言葉が「微差・僅差」です。
道具を使ったら手入れして戻す。置き場所を決める。前より少し使いやすくする。一つずつならわずかな違いでも、毎日、何年も続ければ目に見える違いになります。

掃除用具庫は、誰かが一度だけ片づけて完成したものではないはずです。使う人たちが工夫を重ね、守り続けてきたからこそ、今の姿がある。微差の積み重ねが大差になるということを、実物を通して学びました。
会社の日常に置き換えて考える
会社経営でも、売上や利益という結果には目が向きます。その数字を生み出す日常の仕事に、どれだけ目を向けられているでしょうか。
お客様への返事を少し早くする。会議の資料を一歩分かりやすくする。仕事の終わりに、次の人が使いやすい状態にしておく。どれも、その場では目立たない行動です。それでも、社員一人ひとりが続ければ、会社の仕事の質は少しずつ変わっていくと思います。
逆に「これくらいでいいか」という小さな妥協も、積み重なります。自社では、どのような小さな工夫が続いているでしょうか。決めたことが、日々の行動にまで落ちているでしょうか。
例えば、資料の置き場所を決めても、忙しい日に戻せなければ、次の人は探すところから始めます。小さな時間ですが、毎日繰り返せば大きな時間になるでしょう。道具の扱いを振り返ることは、日々の仕事の進め方を振り返ることにもつながります。
二度目の訪問で、改めて感じたこと
約4年前に初めて朴の森を訪れたときも、大きな感動がありました。ただ、そのとき中央総研から参加したのは私一人でした。現地で見たこと、感じたことを社内でうまく伝えられず、仕事の中で何かを変えるところまでつなげられないまま、月日が過ぎていました。
今回は、中央総研から私以外に6人が参加しました。同じ場所に立ち、用具庫を見て、掃除を体験し、お話を聞く。そこで一人ひとりが何を感じたかは同じではないでしょう。それでも、現地で共に学んだ体験があることは、後から言葉だけで伝えるのとは大きく違うと感じました。

「感動」という言葉を、私は「感じて、動く」ことだと受け止めています。感動して終わるのではなく、それぞれが現地で感じたことを持ち帰り、日々の仕事で一つでも行動に移していきたい。今回、仲間と一緒に訪れたことで、研修や社外での学びを共有する意味を改めて感じました。
小さな行動から、社風をつくっていく
今回の研修では、掃除以外にも多くのことを学ばせていただきました。物を大切に扱うことも、次に使う人を考えて道具を戻すことも、一度の研修だけで身につくものではありません。毎日の仕事の中で繰り返してこそ、自分たちのものになるのだと思います。
現地で共に学んだ7人から、学びを社内にも広げていく。そして、それぞれが今日の仕事で一つの微差をつくり、明日も続ける。その積み重ねによって、中央総研の社風を少しずつつくっていきたいと思います。

