初心者でも迷わない 未来から逆算する「経営計画」の作り方

前回の記事では、経営計画とは単なる「銀行に提出するための書類」や「売上目標を並べた表」ではなく、
社長の頭の中にある未来像や意思決定を、数字と言葉で可視化するものだとお伝えしました。
前回の記事はこちら▼▼▼
そして、経営計画を考えるうえで重要なのは、
現状の延長線上から未来を予測するのではなく、ありたい未来から現在へ逆算することです。
では、実際にどのような順番で経営計画を作ればよいのでしょうか。
後編では、会社にお金を残すための経営計画を、4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:現状の延長線上を捨て、「ありたい未来像」を描く
経営計画を作るとき、最初に避けたいのが、
「前年実績に数%上乗せするだけ」という考え方です。
現状を基準にしてしまうと、
「人手不足だから、このくらいが限界だろう」
「去年が4,000万円だったから、今年は4,200万円くらいでいいか」
というように、現在の制約に未来を縛られてしまいます。
まず考えるべきなのは、自社が本当に実現したい未来です。
経営理念に立ち返り、「こうなったら良い」と心から思える未来像を描いてみてください。
例えば、
- 社員一人当たり100万〜200万円の利益を生み出し、還元できる組織にする
- 借入金の返済負担を減らし、十分な手元資金を残す
- 社員の給与水準を1.2倍にする
- 特定の商品・サービスで地域No.1を目指す
- 社長が現場業務に追われなくても会社が回る状態をつくる
といったものです。
最初からきれいにまとめる必要はありません。
まずは断片的でもよいので、
数字で表せる「定量ビジョン」と、言葉でしか表せない「定性ビジョン」
の両方を書き出してみましょう。
ステップ2:事業ドメイン「どこで戦うか」を絞り込む
未来像を描いたら、次に考えるのが、
「その未来を実現するために、どこで戦うのか」です。
これが「事業ドメイン」です。
具体的には、
- どの商品・サービスを中心に扱うのか
- どの業界を対象にするのか
- どのような顧客層と付き合うのか
- どの地域・市場で戦うのか
を決めていきます。
中小企業には、大企業ほど多くの経営資源がありません。
「あれもやる、これもやる」と広げすぎるほど、経営資源は分散します。
だからこそ、「どこで戦い、どこでは戦わないのか」を決めることが重要です。
これが戦略です。
ステップ3:「絶対必要利益」から必要売上高を逆算する
ここが、経営計画の中でも特に重要なポイントです。
多くの会社では、売上 → 経費 → 利益という順番で考えています。
つまり、
「来年はこのくらい売れそうだ」
「そこから経費を引いたら、これくらい利益が残るだろう」という考え方です。
しかし、この方法では人件費や物価上昇による固定費増加に対応できず、
十分な利益を確保できない可能性があります。
そこで必要なのが、
「必要利益を先に決め、そこから売上高を逆算する」という考え方です。
なぜ「利益が出ているのにお金が残らない」のか
経営者の方からよく聞くのが、
「決算では利益が出ているのに、銀行口座にお金が残っていない」という悩みです。
ここで理解しておきたいのは、
決算書上の利益と、銀行口座に残る現金は同じではないということです。
代表的な原因を見てみましょう。
借入金の元本返済
借入金の元本返済は、基本的に経費にはなりません。
つまり、税金を支払った後に残った利益などから、返済資金を捻出する必要があります。
利益が出ていても、毎月多額の借入返済があれば、当然ながら現金は減っていきます。
在庫
在庫を仕入れれば、その時点で現金は会社から出ていきます。
しかし、商品が売れるまでは売上にはなりません。
在庫とは、言い換えれば、
「形を変えて眠っているお金」です。
必要以上に在庫が増えれば、それだけ手元資金は減少します。
売掛金
商品やサービスを販売して売上が計上されても、実際の入金が翌月や翌々月になることがあります。
特に売上が急増すると、売掛金も急激に膨らみます。
その結果、
「売上も利益も増えているのに、現金が足りない」という状況が起こることがあります。
これが、成長している会社ほど資金繰りに注意しなければならない理由の一つです。
必要売上高を逆算する4つの手順
必要売上高を逆算する4つの手順についてはこちらを要チェック▼▼▼
ステップ4:戦略から戦術へ落とし込む
必要売上高が分かったら、いよいよ具体的な行動を考えます。
ここまでで、
- どこで戦うのか
- いくら稼ぐ必要があるのか
が決まりました。
最後に考えるのが、「具体的にどうやって実現するのか」という戦術です。
例えば、
- 新規顧客をどう開拓するのか
- 既存顧客をどう維持するのか
- 客単価をどう上げるのか
- リピート率をどう高めるのか
- 人材をどこへ配置するのか
- どの商品に営業力を集中するのか
といった具体策です。
「戦術」から考えてはいけない
経営でよくある失敗が、
「とりあえずInstagramをやろう」
「チラシを配ろう」
「広告を出そう」
と、いきなり手段から考えてしまうことです。
Instagramもチラシも広告も、すべて戦術にすぎません。
その前に、
誰を顧客にするのか
どの商品を売るのか
どの市場で戦うのか
という戦略が決まっていなければ、発信内容も営業活動もブレてしまいます。
その結果、他社との違いがなくなり、最終的には価格競争に巻き込まれます。
必ず、戦略=どこで戦うかを決めてから、戦術=どう戦うかを考える。
この順番を守ることが重要です。
経営計画作成の流れを整理すると
ここまで紹介した経営計画の基本的な流れは、次の4ステップです。
- ありたい未来像を描く
- 事業ドメインを絞る
- 絶対必要利益から必要売上高を逆算する
- 戦略を具体的な戦術へ落とし込む
つまり、
未来 → 戦う場所 → 必要な数字 → 具体的行動という順番です。
現状の数字から未来を予測するのではありません。
まず「どんな会社にしたいのか」を決め、そこから現在へ逆算していくことがポイントです。
まとめ:会社は「粗利益」によって生きている

経営計画を作るうえで、最後に忘れてはいけない2つの大前提があります。
- 会社は粗利益によって生きている
- 粗利益は、お客様からしか生まれない
どれだけ社内で立派な会議をしても、それだけで新しい粗利益は生まれません。
経費削減も重要ですが、削減だけでは新たな粗利益を生み出すことはできません。
粗利益は、
お客様と真摯に向き合い、その欲求を満たし、喜んでいただいた結果として生まれる「感謝の対価」です。
「利益が出ているのにお金が残らない」という悩みの本質も、最終的にはここにつながっています。
十分な粗利益がなければ、
- 借入金の元本返済
- 売掛金の増加
- 在庫資金
- 設備投資
- 人材投資
- 将来への備え
といった資金需要を吸収しながら、会社の口座に現金を残していくことはできません。
経営計画とは、単なる売上目標やノルマを並べた表ではありません。
「自分たちの得意分野で、お客様が求めていて、競合が簡単には参入できない領域」を見つけ、そこへ経営資源を集中させるための社長の意思決定書です。
言い換えれば、
経営計画とは「社長の頭の中」を数字と言葉で可視化した、覚悟の宣言書なのです。
最初から完璧な経営計画を作る必要はありません。
まずは粗削りでも構いません。
最初の一歩として、自社にとっての「絶対必要利益はいくらなのか」を計算するところから始めてみてください。
その数字が見えた瞬間から、
「何となく経営するドンブリ経営」から「未来から逆算する経営」への転換が始まります。

