【脱・ドンブリ経営】社長の頭の中を可視化する「経営計画」の本当の目的とは?

「毎日現場に出て、クレーム対応やスタッフのフォロー、資金繰りに走り回って、気づけば1日が終わっている……」
「決算書を見るとしっかり『利益』は出ているはずなのに、なぜか銀行口座の残高が増えていなくて冷や汗が出る……」
「自分には経営の能力が足りないのではないか……」
そんなふうに、日々の業務に追われて頭を抱えている経営者の方は少なくありません。
しかし、それは決して「能力が足りない」からではありません。
単に、会社を導くための「設計図=経営計画」がないだけなのです。
利益が出ているのに手元に現金がない状態が悪化すると、最悪の場合、黒字倒産を引き起こしてしまうこともあります。
では、経営計画とは何のためにつくるのでしょうか。
前編では、経営計画をつくる前に知っておきたい「本当の目的」と「基本的な考え方」について解説します。
1. 経営計画は「銀行のための書類」ではない
「経営計画」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
「金融機関に融資を頼むときに提出するお堅い書類」
「未来を適当に予測しただけの数字遊び」
そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、それは経営計画の本来の役割ではありません。
経営計画の本質的な目的は、
「人・時間・資金といった限られた経営資源を、どこに集中させるかを決めること」
にあります。
中小企業には、大企業のように潤沢な「ヒト・モノ・カネ」があるわけではありません。
だからこそ、限られた経営資源をいかに有効活用し、強い事業構造をつくっていくかを真剣に設計する必要があります。
特に昨今は、物価や人件費が上昇しています。
何の対策も打たなければ、会社の体力である「利益」は少しずつ削られていきます。
利益は「残り物」ではなく「事業存続費」
ここで、経営者として大前提となる意識の切り替えが必要です。
利益とは、売上から経費を引いた結果、「残り物」として手元に残ったお金ではありません。
利益は、会社の未来を守るために、あらかじめ確保しておくべき「事業存続費」です。
利益については前回のコラムで要復習!!▼▼▼
利益をどう確保するかをあらかじめ設計するものが経営計画です。
経営計画とは、自社の命運を握る経営の羅針盤だと考えてください。
2. 大原則:経営計画は「社長自ら」が書き上げる
経営計画をつくるうえで、非常に重要な原則があります。
それは、経営計画は社長自身がつくるということです。
経営コンサルタントとして知られる一倉定氏も、経営計画書は社長自身が作成することの重要性を説いています。
では、なぜ税理士やコンサルタントに丸投げしてはいけないのでしょうか。
理由はシンプルです。
自社の経営について、そのまま答えを教えてくれる教科書は存在しないからです。
A社にはA社の経営があります。
B社にはB社の経営があります。
商品も違えば、顧客も違います。
社員も違えば、地域も競合環境も違います。
社長自身が悩み、自社のビジネスモデルと向き合いながら計画を書く。
その過程で、
「そもそも自社は何で利益を生んでいるのか」
「今後どの商品を伸ばすべきなのか」
「どの顧客と付き合っていくべきなのか」
といったことを考えることになります。
このプロセスそのものが、経営戦略をつくる作業なのです。
大切なのは、
「この利益は必ず確保する」
と、社長自身が意思決定することです。
その覚悟があって初めて、経営計画に命が吹き込まれます。
3. 経営計画を構成する「2つの期間」と「2つの要素」

経営計画を作成する前に、まず全体の構造を理解しておきましょう。
経営計画には、大きく分けて、
- 長期計画
- 短期計画
があります。
長期計画と短期計画の違い
| 項目 | 長期計画(5年) | 短期計画(1年) |
|---|---|---|
| 性質 | 未来に対する意思決定・仮説 | 目の前の具体的な行動基準 |
| 考え方 | 「5年後、こうなりたい」 | 「今年1年、これをやり切る」 |
| 変更 | 環境変化に応じて修正する | 原則として安易に変更しない |
5年後のことを正確に予測できる人はいません。
そのため、長期計画は「絶対に変えてはいけない未来予測」ではなく、現時点における5年後への意思決定です。
経営環境が変われば、前向きに修正して構いません。
一方、短期計画は「今年1年、これをやり切る」という具体的な行動基準です。
少し状況が悪くなったからといって、簡単に売上目標や利益目標を下げてしまっては、計画として機能しなくなります。
「利益計画」と「経営方針」の違い
経営計画は、さらに次の2つで構成されます。
- 利益計画=数字
- 経営方針=言葉
利益計画とは、現状と理想の未来との間にある「ギャップ」を数字で表したもの
一方、経営方針とは、そのギャップをどのように埋めるかを言葉にしたもの
例えば、現在の売上高が4,000万円だとします。
しかし、会社を維持・成長させるためには5,000万円の売上が必要だと分かったとしましょう。
すると、
5,000万円 − 4,000万円 = 1,000万円
というギャップが見えてきます。
「あと1,000万円も売上を増やすなんて無理だ」
と感じるかもしれません。
しかし、実はこのギャップが見えた瞬間こそ、経営計画の本当のスタート地点です。
現状のままでは会社や社員を守れない。
その事実が数字によって可視化されるからこそ、
- どの商品を伸ばすのか
- どの顧客を増やすのか
- 単価をどう見直すのか
- どの事業から撤退するのか
- どこに人や資金を集中するのか
といった具体的な経営方針を、真剣に考えられるようになります。
4. 経営計画は「未来から逆算する」ためのもの
ここまでの内容で、経営計画は単なる「売上目標表」ではないことがお分かりいただけたと思います。
大切なのは、
今の会社を基準に未来を考えるのではなく、ありたい未来を先に決め、そこから現在へ逆算することです。
「今の売上なら来年はこのくらい」
「去年より5%増えれば十分」
という発想だけでは、現在の延長線上から抜け出すことはできません。
まず、「5年後、どんな会社になっていたいのか」を考える。
そして、その未来を実現するためには、
「来年、何を実現していなければならないのか」を考える。
さらに、そのために必要な利益や売上、事業戦略を具体化していく。
これが経営計画の基本的な考え方です。
次回:初心者でも迷わない「経営計画」の作り方4ステップ
ここまで、経営計画の本当の目的と、なぜ社長自身が考える必要があるのかをお伝えしてきました。
では、実際に経営計画を作るときは、何から始めればよいのでしょうか。
次回の後編では、会社にしっかりとお金を残すための絶対必要利益からの逆算思考経営計画の作り方を、4つのステップに分けて解説します。

